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心理学ワールド 81号 Over Seas オランダ研究生活で得たもの 大澤 香織(甲南大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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38 Profile─大澤香織 2001年,早稲田大学人間科学部卒 業。2003年,北海道医療大学大学院 看護福祉学研究科臨床福祉・心理学 専攻修士課程,2008年,同博士課程 修了。博士(臨床心理学)。専門は臨 床心理学。著書は『外傷体験想起時 の認知・行動と外傷性ストレス反応』 (風間書房),『心理学実験を学ぼう!』 (共編,金剛出版)など。

オランダ研究生活で得たもの

甲南大学文学部人間科学科 准教授

大澤香織

(おおさわ かおり)  2016年9月 より 半 年 間 の 在 外 研究の機会を頂き,オランダのア ムステルダム大学にあるアカデ ミック・メディカル・センター (AMC)に客員研究員として滞在 しました。滞在先であるオランダ は,在外研究で訪れるまでほとん ど馴染みのない国でした。私の専 門はトラウマ関連症状に対する認 知行動療法であり,その研究も実 践もアメリカやイギリスが主とな ります。それでもオランダに行こ うと決めたきっかけは,2015年に 訪日されていたミランダ・オルフ 教授のご講演でした。心的外傷後 ストレス障害(PTSD)の発症予 防に積極的に取り組んでおられる ことに感銘を受け,その数ヵ月後 にはAMCを訪れ,研究ミーティ ングにも飛び入り参加させて頂き ました。突然のお願いにも関わら ず,快く研究室訪問をさせてくだ さったオルフ教授には大変感謝し ています。オルフ教授の気さくで 優しいお人柄,英語が拙い外国人 という偏見なく,私の研究に熱心 に耳を傾け,助言してくださる姿 勢にも惹かれ,滞在を決めました。  AMCはアムステルダムの中心 部から少し離れた郊外にあり,緑 あふれる広大な敷地には総合病院 施設と複数の研究棟が建ち並ん でいます。滞在中は,オルフ教授 が率いるトラウマ研究グループに 参加させて頂きました。大学院生 やポスドクを含めた10数名のグ ループですが,オキシトシン摂取 やスマートフォンアプリ等を活 用し,トラウマ関連症状の慢性化 やPTSD発症を予防する試みを他 機関と連携して行っています。ト ラウマによるストレスの慢性化や 関連疾患の発症の予防に向けて心 理教育の効果を検証してきた私に とって,同じ志を持つ研究者たち の輪に加えて頂けたことは本当に 幸運でした。  研究グループでは週1回ランチ ミーティングが行われ,各自が持 ち回りで研究発表をし,その内容 について議論します。私も,拙い 英語で研究発表をさせて頂きまし た。メンバーからの質問や指摘は どれも的確で,自身の研究を見直 す良い機会となりました。研究に 対して妥協しない姿勢を保ちつつ も,常にオープンで好奇心とユー モアを忘れないメンバーたちから 改めて「研究は楽しむもの」と教 えられたように思います。また, 常に親切で温かく,笑顔で接して くれる研究グループの存在は,初 めての在外研究に不安や戸惑いを 抱いていた私にとって大きな支え となり,励みにもなりました。帰 国直前に,メンバーたちがゴッホ の絵の塗り絵をプレゼントしてく れました。私がオランダ出身の画 家・ゴッホの絵が好きであること を覚えていてくれて,プレゼント してくれたその気持ちが何より嬉 しかったです。瞬く間に半年が経 ち,後ろ髪をひかれる思いで帰国 の途につけたのも,オルフ教授と 研究グループの存在あってのこと です。半年でできることには限界 があり,特に臨床研究では言葉の 壁(オランダ語)が大きく,十分 に研究ができたとは言い難い面も ありますが,研究者と実践家の両 輪でキャリアを積む道中で素晴ら しい仲間たちと出会い,つながり を持てたことに心から感謝してい ます。この貴重な経験を糧に自身 の研究をさらに発展させていき, それがAMCの仲間たちへの恩返 しにもつながれば,これ以上の喜 びはありません。  ところで,オランダでは入国後 に滞在ビザを取得する必要があ り,その手続きが結構複雑です。 普段は英語で問題ないオランダ も,公式のものは全てオランダ 語。欲しい情報がなかなか手に入 らず,困っていた私を在蘭経験の ある方々が親身になって助けてく ださいました。どの方も「私もオ ランダで多くの人に助けてもらっ たから,今度は私の番」と仰って いたことが印象に残っています。 その方々のおかげもあり,無事に 在外研究を終えることができまし た。そのご恩に報いることがで きるのは,私自身が「今度は私の 番」と言える時かもしれません。 私の経験が少しでもお役に立つこ とがあれば幸いです。

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